しかも、今は少しばかり古くなったが未だに権威を持つ、2000年頃の、欧米での成功者(日本人)によるメンズファッション専門書では、欧米のエグゼクティブがいかに高いもの身に付けているかを、自分のことのように得意げに語って、日本のスーツ着用者と比較するのだ。
その欧米の社会の前提は、「分相応」だと思うので、個人的には、階級意識の希薄な日本人ならば、給料の何パーセントかをつぎ込む覚悟でよく出来た高級品を買えば、大事にしたくなるだろうというぐらいにとらえておく。
が、日本での分相応の指針も、一応あれば、必要と贅沢の違いという不安も少しは和らぐかもしれないと思って、自衛隊幹部の服と靴を、どんな値段なのか、検索して調べてみた。自衛隊の幹部ならば、少なくとも20代の平均的なサラリーマンより全然、高給取りだろうし。
まずは、靴。儀式にも対応する、黒のストレートチップだ。
8600円。同等の市販品より少し安そうだが、少なくとも社会人の指標とも見られるリーガルよりは安いだろう。
次に、背広上下(冬服)。ダブル6つボタンで、かつてのイギリスの戦艦ブレザー号ではじまったといわれる、ブレザー・ジャケットを踏襲した金ボタンだ。
イージーオーダーで、51000円〜。値段だけ見ると麻布テーラー並みで、品質で言えば市販品よりもう少し安い値段が付いていると思っても、少なくともユナイテッドアローズの10万のスーツほどではないだろう。
とまぁ、海上自衛隊の幹部の服が、こんな値段。靴や服に拘ってられない人には、それでも高いだろうが、しかしファッションの本で言われる値段からすると、そんなに高いものでないというのが、印象だ。背広はそこそこ高いかな。あくまで駅長の個人的な感覚として。
それにしても、靴が8600円とは……。拘る人は、自分でストレートチップを買ってきて履くのも許されているのだろうか。参考までに、20代のサラリーマンに向けても宣伝されるCrockett&Jonesのハンドグレードラインは、今の日本価格で8万とか9万円。デパートの店員あたりは、若くても履いてたりするが、若いデパート店員の靴が軍靴の10倍の値段とは、恐ろしい国である。
たまたま幸いなのか、それとも商売だからなのか、男では高い靴履いてるから人を露骨に見下してくる矮小な上等気取りには出会ったことがなく、国産のリーガルやスコッチグレインで、外国の高い靴を履いてる店員に臆する必要があった試しもないので、悪いとは思わないけど。
そもそも、軍人が高いもの身に付けて肩で風切って歩くようになったら、軍人を常に神聖視しなければならなくなり、それは嫌な世の中ではないだろうか。国を守ろうという志は立派であり、自衛隊の存在は否定してしまうこともなかろうが、だからと言って自衛隊に、国を守る偉い存在なのだと自称され、国民に対してかつての特高・憲兵のごとき傍若無人な振る舞いをされるのは、望むところでない。
日本には日本人の考える分相応という秩序があるわけで、それを無理に欧米と同じように、収入や地位ばかり絶対の指針にするのも違うのだろう。と言っても、稼いでくるオヤジに安物での我慢を強いる家庭なんぞについては、そればっかりはなんか可哀想だとも思うけどね。


